セリスの髪は細い。
ゆびさきにまとわると、すこしひやりとしていて、絹をなでるような感触がする。
肩を抱き寄せて鼻先を埋めれば、ふっと花の匂いがする。それは、もうすっかりロックの感覚になじんだものだ。
白金の髪のいろが橙色の光にすけて、きらきらする。
セリス、と名を呼んで、肩先に唇をよせれば、びくりと震える。
しろくてやわらかな肌の奥には、しっかりと筋肉があって、それでもロックに比べれば柔くてまろい。抱きしめて、あ、と耳元に軽く歯をあて、もう片方の手はひじから手首へとなぞっていく。指先どうしを絡める。指の腹もてのひらも剣胼胝で固くなった、いとおしい手だ。
もう一度、呼ぶ。――セリス。セリス、その涼やかなひびきは、転がしだすのどにも舌先にも、甘い。指先で彼女の指先を味わいながら、声で彼女の名を、あじわう。
ぴたりと重ねればすっぽりと自分のてのひらのなかに収まってしまう、その掌も。
女にしては広いようでいて軽く抱え込んでしまえる肩の幅も。
一寸横を向けば唇をあてることができる薄桃色の耳朶も。
ちょうどロックの身体の寸法を測って誂えたかのようだ、と思うことがある。
陽が、翳りはじめる。
日没まではずっとこのまま、セリスを抱きしめて、髪をするすると弄って、胸元をぴたりとくっつけて、とくとくいう心臓の音と、戸惑ったように目尻のあたりをぱさぱさなでる長いまつげの感触と、あたたかな体温を感じ取っていたい、そう思った。